ふじまるぽーたる

音楽、自作好き筆者の愉快な日々の記録。

いとうせいこう著「自己流園芸ベランダ派」

 仕事がらみで、MJ=みうらじゅんの盟友、いとうせいこう氏の著作を読む機会があった。寡聞にして、いとうさんが園芸好きとは知らなかったので、「PLANTED」という園芸雑誌の編集長をしていたこと、そして、園芸関係の著作が複数あり、自らをガーデナーならぬ、「ベランダー」と称しているほどの、こだわりがあることにちょっとビックリ。作家、ミュージシャンさまざまな顔を持ついとうさんだけど、まだ引き出しがあるのか。
 「〜ベランダ派」とあるように、いとうさん自宅のベランダで展開される、悲喜こもごものガーデニングエッセイだ。でも、いとうさんだけにフツーのエッセイではない。
 帯にある、「枯らしてもいいのだ!」というフレーズが全てを物語る、ユニークなベランダ園芸論。
存在自体が不自然なベランダ園芸、プランター園芸の中で、「美しく、旺盛に咲かせたい!」という欲求とどう折り合いをつけながら暮らしていくか。
そんな、失敗だらけの園芸の中に見出す、喜びや悲しみの本質。

ベランダ園芸を通して自分や世間を見つめる視点や、なんでそう感じるのか解明するまでじっくりつきつめ正直にカミングアウトする姿勢が、いとうさんらしく、なんていうか、作家だし、ラッパーだし、クリエイターだ。
 朝日新聞で連載していたものの単行本化なので、ムダのない文章は(多少マンネリ気味だが)リズミカルで気持ちいいし、数箇所に点在する読者とのやりとりのページは、いつもMJに突っ込む役割のいとうさんが、読者に教えられたり励まされたりで、面白い。
 通勤電車の中でスルスルッと読めてしまった、気楽な本でもあるので、オススメです。園芸論に関して是非はあるかもしれないけど。

自己流園芸ベランダ派

自己流園芸ベランダ派