ふじまるぽーたる

音楽、自作好き筆者の愉快な日々の記録。

「音に色が見える世界」

 世の中には「共感覚」というものがあるらしい。
物事を認識する際、例えば音が聞こえた時。感覚器官である耳から得られる情報=音から、音だけでなく色や手触りや匂いなど、他の感覚器官から得られるような感覚をも感じてしまう能力のことだ。
「なんてステキな感覚!まるで世界が極彩色なのでは・・・」
なんて、素人目にうらやましく思ってしまうが、当の本人はかなり大変で、特に排他的な風潮が著しい今日では生きにくいといってもいいようだ。
 この本は、共感覚者からすると違和感のある、今までの共感覚研究の危険を説き、共感覚者である著者自ら「非・共感覚者」の言葉で語ったもの。実際どのように感じるのか、それはなぜなのか。独自の研究に基づき、文化の側面に着目して論じている。
 読んで感じるのは、著者が共感覚を持ったことによる他者との違いに悩み、ある意味、自己肯定のために莫大な時間、知力をかけてこの本を書いたのだなということ。実際、同じ立場の人に自信を持って生きて欲しい、というようなメッセージも込められている。
 「もともと共感覚は昔の人はすべて持っていた感覚なのではないか。」
著者は、日本の古典や和歌などからその仮説を導き出しており、読んでいて、けっこう納得がいく。だれでも古典などに「なんでこんな言葉使うんだろ」的な、比喩にしては極端な表現に出会ったことがあるはずだ。その他にも、音楽や詩歌に秀でた著者ならではの視点が面白い。
 現在でも、後天的な認識を得る前の幼児などには、共感覚的な感じ方が残っていることがあるという。ウチの娘が唐突に妙なことを言うのも何か大人には見えない、楽しいものを感じてるのかもしれないな。

音に色が見える世界 (PHP新書)

音に色が見える世界 (PHP新書)