ふじまるぽーたる

音楽、自作好き筆者の愉快な日々の記録。

年間自作堂「墨付け〜刻み」

IMG_1372 昨年から取り組んでいる年間自作堂も、いよいよ本格的な実践作業。3〜4回目は「墨付け」、5〜7回目は「刻み」の特訓をしました。ホントはこんな短期間で墨付けや刻みなんてさせてもらえるわけがなく、何年も修行が必要なのですが全8回の自作堂、そういうわけにも行きません。汚れてもOKな出で立ち、軍手を用意してGO!

芯墨の練習

 といっても、前回やっとこ墨ツボと墨差し触ったばっかりで、いきなり本番の木に墨付けは無謀なので、練習。そう、アレです。糸をツーっと伸ばしてピンッてやるやつ。
芯墨とは、木幅の中心線のこと。中心線の両端に当たる場所に印をし、墨に浸した糸を渡して上に引っ張って弾きます。適度な張りで真上にしっかり弾けば長い木材でもキレイな直線が引けるという訳で、定規で引いた線をチマチマ繋ぐよりも合理的。
練習では大きなベニヤ板で何度も何度も弾いて感覚を覚えていきました。コツは、端に糸を固定する時にピンに糸を2〜3回クルクルと巻くこと。巻き終わりをピン先ギリになるようにすることで糸の浮き上がりを避け、墨が木材にしっかり付きます。とはいえ、む、難しい!
(写真:アリほぞの墨)

責任重大、本番墨

IMG_1373 ここからはチーム作業。先日、木拾いした木材に墨を付けて行きます。
それぞれの部材は、組み合わせの相手材と継手や仕口で接合するため、それぞれの組み方に合わせて木を刻まなければなりません。しかしこれが難解、まるでパズルのような構造!しかも肝心のこの構造は完全OJTなので(笑)わずかな紙資料と模型を確認しながらの作業。私はこれが一番不安で、難しかった。後でわかりますが実際、下手だった(苦笑)
とにかく、材に墨をつける時は「どの場所に使われる材か」「芯墨はズレでないか」「仕口/継手の形はどうか」「描き方は間違ってないか」ひとつひとつ確認することが大事。これを間違うと、次に控える刻み作業に影響し、取り返しのつかないことに…汗
(写真:うーん、もうドコの墨がわからないよ…)

ドキドキの手刻み

 すべての材に墨線がつけられたら、いよいよ刻みの工程。
まずは必要道具。ノミ、玄能(カナヅチ)、サシガネ、墨ツボ、墨差し、タテ引きと横引きのノコギリが一式。
刻みの工程は、ズレが生じると組み込みの際にはまらなかったり、はたまた、ユルユルだったりで使い物にならなくなってしまうため、正確に刻めるよう、大工さんがあらかじめ道具をきれいに、ピカピカに手入れしてくれています。それだけに刃物などは切れ味も抜群。せめて怪我しないためにも、やはりまず練習。
IMG_1817 木材に、凹型のほぞ穴をあけるために長方形の墨をいれ、そのグルリにノミの刃を入れます。その後、奥から手前に向かってノミを入れ玄能でたたくと、グルリの刃跡に沿ってチーズを削るように木がはがれます。そのまま同じように、手前から奥、奥から手前、とノミを入れ、テコの要領で木を掘り起こして進めます。
りん木の上に置いた材の上に腰掛けて材を固定するのですが、右利きなら左手でノミを握り、左にほぞ穴、材の左側に背を向けて座り、身体を左にねじって玄能でたたきます。要するにノミはできるだけ自然な姿勢で握るということ。怪我のリスクが減ります。また、厳しく「ノミを直接、下に置くな」とも言われました。固いコンクリや石などで刃が欠けると切れ味が劣るだけでなく、無理強い使いがで道具が滑り怪我の原因になるからだそうです。大工さんが道具を大事に手入れしてくれた理由がわかりますね。
アタシはさすがに下手なりに実務をある程度やってるのでカナヅチのふるい方だけは褒めてもらったんだけど、調子に乗って雑念が入ると手を殴ったり(泣)、かといって、集中しすぎて加減を忘れ、本番の刻みの時に掘り過ぎたり(笑)。一番大事な刻み作業には、落ち着きと精神的なバランスも必要です。
(写真:長方形のほぞ穴をノミで作ります)

思いのほか辛い、ノコギリ作業

IMG_1251 ほぞ穴の後は、凸型のほぞを作るためにノコギリで角材の端を加工。繊維にそって切るときはタテ引き、繊維を切断する際はヨコ引きを使います。ノコ作業のときも、りん木を下に引いて作業しますがこれがメチャ大変。作業場所が低い位置なので腰を屈めた姿勢となり、正直、腰いわします。あんまり辛いので、片手でノコギリ握ったり、いろんな不良な姿勢でやってたら頭領からチェック入れられました(苦笑。
墨線の始点と終点がまっすぐになる位置に顔を置き、両手でノコギリを握り、刃も一直線になるよう身体の真ん中で動かせと。作業の基本姿勢さえしっかりしていれば、墨線からずれずに楽にきれいな切り口になるから、と直々に指導してもらいました。あと、ノコギリは力を入れずに大きく動かすこと。結果的に作業効率が上がり、仕上がりもキレイになります。
(写真:ノコギリで切り出した、ほぞ。ほぞ穴に入れやすくするため先を面取りします)

やっと先が見えた!が…

IMG_1700 みんなで手分けして墨付け2日、刻み3日。やっと全ての材の準備ができました。あとはそれぞれの材を組み上げ、棟上げ〜完成です。
はあ〜!指を玄能で何度も殴り、ノコギリに悪戦苦闘したけれどやっと、完成までの光りが!じゃあ、少し遅れてる別チームでも手伝いますか!
なんて思っていたら…仮組みチェックで、アタシの墨線ミスが発覚!(泣)しかも複雑なアリ継ぎ部分。頭領はじめ大工さん、チームのみんなが頭をつき合わせて原因追求〜解決策を模索。結局のところ、芯墨の時にセンターの取り方にミスがあったと思われる。なぜそうなったかは…自分の墨だからよくわかる、その時の心理。でも言わない(笑)。次は同じミスは犯さないぞ。最後にもう1回、確認するぞ。ちきしょー!
というわけで、メンバーのみなさんに修正してもらいながらアタシは別チームの刻み(苦笑)。恥ずかしいやら申し訳ないやら。でも、修正も勉強のうち、と言わんばかりに皆さん進んで作業してくださいました。ありがとうございました!
(写真:玄能でなぐっちゃった指…)

 「作る」ための重要作業である墨〜刻みを習った全5回。実務として飛び交う専門用語、理解できてない仕口/継手の形状、慣れない工具、ついて行けない体力(爆)。本当に大変で、毎回終わった後は知恵熱でグッタリ。自宅では環境が整わないので最も復習がしにくかった回でもありましたので、毎回最初の1時間ほどは前回の復習として練習をさせてもらえたのは助かりました。仮組みの時も、あとに作業したものほど狂いが少なく、みんな腕を上げて行ったことがわかります。ホント、短期間なのにみんなよく頑張ったよねー。
 次回は棟上げ、最終日。
思い残しがないように、自信のないところは潰しつつ、打ち上げでは楽しく飲みたいところです。